税理士として顧問先の経理担当者と接する機会は多い。決算期の前後や月次処理の締め日に、担当者が追い詰められた様子を見せることも珍しくないだろう。「なぜ経理の仕事はこれほど負担が大きいのか」──その背景を、実際のデータで確認してみたい。
株式会社ビズヒッツが2025年9月、経理経験者367人を対象に実施したアンケート調査(「経理の仕事できついことに関する意識調査」)によると、最も多かった回答は「間違いが許されない(26.7%)」であり、次いで「締め切りに追われる(20.7%)」「細かい作業が多い(16.9%)」と続いた。
■ 「1円も合わない」プレッシャーが生む精神的負担
トップに挙がった「間違いが許されない」という回答の背景には、お金を扱う仕事特有の厳しさがある。「計算ミスは許されない。1円でも合わないと合うまで何度も見直す」という声に代表されるように、数字の誤りが会社の信用や取引に直結するという緊張感が、日常的に積み重なっていく。
さらに「できて当たり前という減点方式で、通常はインセンティブがない」という声も目立った。正確に仕事をこなしても評価されにくく、ミスをした場合にのみ目立つという構造が、精神的な消耗を招きやすい。
経理の繁忙期として最も多く挙げられたのは「決算期(63.2%)」で、「月末(49.0%)」がそれに続く。決算期には通常業務に加えて各部門からの資料収集や数値確認、書類作成が重なり、営業部門への情報共有の依頼なども含めると、肉体的にも精神的にも消耗しやすい時期であることが改めて浮き彫りになっている。税理士が関与先の決算を支援する際には、こうした経理担当者の負担感を意識しておくことが、より良いコミュニケーションにつながるはずだ。
■ 現場が実践する「きつさをやわらげる工夫」と、税理士が果たせる役割
では、経理担当者はどのようにして日々の負荷を乗り越えているのか。調査では「タスクを前倒しでこなす(46.0%)」が圧倒的な1位となり、「タスク管理を行う(25.1%)」が続いた。
締め切りから逆算して業務を組み立てる、優先順位を可視化する──これは個人の工夫に聞こえるが、実は外部から支援できる部分も多い。たとえば税理士側が月次のスケジュールや必要資料の提出期限を事前に明示することで、担当者が計画を立てやすくなる。決算スケジュールの早期共有や、チェックリストの整備なども有効な支援になりうる。
今回の調査結果は、経理の現場が抱える構造的な負荷を改めて可視化するものだった。税理士が顧問先に入り込む際、「数字を見る」だけでなく「現場の担当者がどのような状況に置かれているか」を理解することが、より実効的な支援につながる。経理という仕事の本質的な難しさを共有した上で、具体的な改善提案ができる関係を築いていきたい。
(画像:株式会社ビズヒッツのプレスリリースから引用)
※参考:株式会社ビズヒッツプレスリリース(2025年11月20日)
コメント
山中 宏
山中 宏(やまなか ひろし)/税理士/山中宏税理士事務所
2026.3.13 投稿
経理の仕事においては「できて当然」と見なされ、注目されるのはミスが出たときだけ。 私自身もそう感じてきました。
上場企業であればなおさらで個人のミスでは済まず、内部統制の問題として組織全体の体制が問われることになります。
さらに誤った数字がそのまま開示されれば、株主や債権者にも迷惑をかけます。
ただ、現場を長く見てきた実感として、経理の評価は「早く、正確に」を地道に積み重ねられるかどうかで決まります。
派手さはなくても、それを続けた人ほど確実に信頼が積み上がっていく。
「できて当たり前」をコツコツ続けられる人が、最終的に役割や職位という形できちんと報われやすいのは、実は経理という仕事の良さのひとつだと感じています。
また、この「きつさ」は経理だけの話でもありません。
営業担当が見積書を作る場面でも、数字が間違っていれば取引先に迷惑をかけ最悪の場合、取引停止となるプレッシャーもあるかと思います。
経理部門は会社の活動を数字に置き換える役割のため、負担が表に出やすいのだと思います。