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2026.10.8

毎年10月は最低賃金の改定に要注意!見落としがちな落とし穴とは?

田谷 信輔

毎年10月は最低賃金の改定に要注意!見落としがちな落とし穴とは?

最低賃金の引き上げは、税理士事務所・税理士法人の経営者や採用担当者の皆さんにとって、給与や人件費、採用条件を見直す重要なタイミングになっているのではないでしょうか。

地域別最低賃金は都道府県ごとに異なるため、改正額だけでなく発効日や最低賃金の計算方法を正しく把握しておく必要があります。また、正社員やパート・アルバイトの採用や給与設定にも影響するため注意が必要です。

本記事では、最低賃金の目安制度や改正の仕組みをはじめ、月給制・年俸制における最低賃金の計算方法、対象となる手当、改定前後で注意すべきポイントまで、採用・労務管理に役立つ情報を分かりやすく解説します。

目次

■令和8年度 地域別最低賃金の改定について

 この度、9月3日(木)に厚生労働省 労働基準局賃金課より各都道府県からの答申内容が発表されました。

都道府県名 答申された改定額(改定前の金額) 引き上げ額 発効日(予定)
北海道 1,131円(1,075円) 56円 令和8年10月1日
青 森 1,090円(1,029円) 61円 令和8年10月29日
岩 手 1,090円(1,031円) 59円 令和8年12月1日
宮 城 1,098円(1,038円) 60円 令和8年10月1日
秋 田 1,090円(1,031円) 59円 令和8年10月14日
山 形 1,092円(1,032円) 60円 令和8年10月30日
福 島 1,094円(1,033円) 61円 令和8年10月16日
茨 城 1,136円(1,074円) 62円 令和8年10月18日
栃 木 1,125円(1,068円) 57円 令和8年10月1日
群 馬 1,120円(1,063円) 57円 令和8年10月3日
埼 玉 1,196円(1,141円) 55円 令和8年10月1日
千 葉 1,195円(1,140円) 55円 令和8年10月1日
東 京 1,280円(1,226円) 54円 令和8年10月1日
神奈川 1,279円(1,225円) 54円 令和8年10月1日
新 潟 1,108円(1,050円) 58円 令和8年10月1日
富 山 1,119円(1,062円) 57円 令和8年10月1日
石 川 1,113円(1,054円) 59円 令和8年10月3日
福 井 1,112円(1,053円) 59円 令和8年10月4日
山 梨 1,113円(1,052円) 61円 令和8年11月1日
長 野 1,117円(1,061円) 56円 令和8年10月2日
岐 阜 1,121円(1,065円) 56円 令和8年10月1日
静 岡 1,154円(1,097円) 57円 令和8年10月15日
愛 知 1,195円(1,140円) 55円 令和8年10月1日
三 重 1,143円(1,087円) 56円 令和8年10月1日
滋 賀 1,136円(1,080円) 56円 令和8年10月3日
京 都 1,180円(1,122円) 58円 令和8年11月16日
大 阪 1,231円(1,177円) 54円 令和8年10月1日
兵 庫 1,172円(1,116円) 56円 令和8年10月1日
奈 良 1,107円(1,051円) 56円 令和8年10月4日
和歌山 1,101円(1,045円) 56円 令和8年10月3日
鳥 取 1,090円(1,030円) 60円 令和8年10月3日
島 根 1,092円(1,033円) 59円 令和8年10月10日
岡 山 1,104円(1,047円) 57円 令和8年10月2日
広 島 1,141円(1,085円) 56円 令和8年10月11日
山 口 1,101円(1,043円) 58円 令和8年10月8日
徳 島 1,103円(1,046円) 57円 令和8年11月1日
香 川 1,092円(1,036円) 56円 令和8年10月1日
愛 媛 1,093円(1,033円) 60円 令和8年11月1日
高 知 1,086円(1,023円) 63円 令和8年10月29日
福 岡 1,114円(1,057円) 57円 令和8年10月4日
佐 賀 1,095円(1.030円) 65円 令和8年10月15日
長 崎 1,087円(1.031円) 56円 令和8年11月2日
熊 本 1,092円(1.034円) 58円 令和8年12月1日
大 分 1,096円(1.035円) 61円 令和8年11月1日
宮 崎 1,085円(1.023円) 62円 令和8年10月24日
鹿児島 1,090円(1,026円) 64円 令和8年10月25日
沖 縄 1,186円(1,023円) 63円 令和8年12月2日
全国加重平均 1,177円(1,121円) 56円 ―

※参照:全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html

■令和8年度の改定内容を分析

発表された本年度の地域別最低賃金から、その特徴を分析してみました。

(1)昨年に次ぐ、史上2番目の高額引き上げ

今年度の改定額の全国加重平均額は1,177円。昨年度からの上昇額は56円となりました。これは「地域別最低賃金の目安制度」が1978年に開始されて以来、2番目に高い引き上げ額です。ちなみに昨年の目安額は63円という大きな引き上げ額となりましたが、その後の企業各社による賃上げ原資の確保困難に考慮し、今回の目安額は55円に落ち着いたと考えられます。

※地域別最低賃金の目安制度とは?
厚生労働省の中央最低賃金審議会が、毎年、都道府県ごとの最低賃金を改定する際の「引き上げ額の目安」を示す制度です。都道府県を経済状況などに応じてA・B・Cのランクに分け、それぞれの目安額を提示します。各都道府県の地方最低賃金審議会は、この目安を参考に地域の実情を踏まえて最終的な引き上げ額を決定します。

(2)10円以上の大幅な上乗せはゼロに

昨年度は、提示された目安額に10円以上上乗せした県は11に及びました。労働者にとっては喜ばしい一方で、地域によっては近県との賃金格差による人材確保の困難など、諸問題も発生。また大幅改定を行った県の発効日が後ろ倒しされる傾向も強まりました。こうした動きを考慮し、中央最低賃金審議会も指導を実施。それにより、今年の上乗せ額は多くが小さな数値となり、+5~9円の県も6件に留まっています。

(3)東京・神奈川に続き、大阪も1,200円台に突入

今回の改正により、東京・神奈川に続いて大阪も1,200円台に突入しました。一方で、地方と都市部の最低賃金格差は徐々に縮小の傾向を見せています。最低額と最高額の差は195円。今後もこの格差縮小の傾向は継続していくと考えられています。

■要注意!改定による最低賃金割れの危険あり!

毎年訪れる最低賃金の改正。政府が掲げる「全国平均1,500円」の目標は「遅くとも2030年代前半できる限り早期」と多少のトーンダウンを見せながらも継続。今後も賃金の向上は社会から企業に求められ続けるでしょう。

改正に伴い、必須で気を付けるべき点が3点あります。

(1)自らの事務所や税理士法人の勤務地が改正最低賃金を発効する日取り

改正額の発効は、上記の表からも理解いただけるように都道府県によって異なります。金額の確認は言うまでもありませんが、「いつから発効=いつまでに準備」のタイムリミットを早めに確認しておきましょう。

(2)現職社員・スタッフの給与額

今現在、雇用している社員さんやスタッフさんの給与。その金額が改定された最低賃金に抵触しないか。その確認を行わなければなりません。また併せて、社会保険料などの増加に関しても注意が必要です。

(3)実施中の採用・募集活動における提示賃金

9月から、あるいは中長期的に採用活動を実施している企業さまもあるはずです。改正の時期をまたいで採用を実施する場合、その提示額にも注意が必要になるでしょう。ハローワークの求人票や各種求人サイトやサービスに提示している給与額を、今一度確認することをおすすめします。

■最低賃金の計算方法

(1)基本となる考え方は「賃金÷時間」

すなわち「最低賃金の対象となる賃金÷労働時間」です。

例えば、【地域別の最低賃金が1200円で、1カ月の対象賃金:24万円/月の労働時間が200時間】の場合、

24万円÷200時間=1,200円

となり、最低賃金をクリアとなります。

(2)月給での支給の場合は…

まず、月給を1時間当たりの賃金に換算する必要が発生します。

例えば、【地域別の最低賃金が1,200円で、月給:24万円/年間所定労働時間1,920時間】の場合、

年間所定労働時間1,920時間÷12カ月=月平均所定労働時間160時間
月給24万円÷月平均所定労働時間160時間=時給1,500円}
最低賃金1,200円<時給1,500円

※年俸制での支給時も同じように、年俸をまず1時間当たりの賃金に換算。その時給を、最低賃金と比較するようにします

(3)最低賃金の計算対象になる手当、ならない手当

最低賃金を計算する際は、基本給のみならず一定の手当も計算対象になります。

①計算対象になる手当
職務手当/役職手当/資格手当/技術手当/技能手当/調整手当(給与水準の調整を目的に「毎月固定的に支給される」手当)
②計算対象にならない手当
通勤手当/精皆勤手当/家族手当/時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金/賞与/臨時の手当(合格祝金・冠婚葬祭手当など)

会計事務所・税理士法人特有の繁忙期の固定残業代や税理士試験受験生(科目合格者)の手当などが最低賃金の計算対象に当たる手当なのかどうか、しっかりと確認しておきましょう。

■経営者のパートナーとして。顧問先企業への情報発信も!

一般企業の経営陣であれば、こうした自社の最低賃金に気を配れば問題ないでしょう。しかし、税理士事務所や税理士法人の担当者や税理士さんであれば、もう一段階広い視野で!ぜひ、顧問先企業さんへも最低賃金にまつわる情報発信をして差し上げていただければと思います。

企業経営へ全力で向き合う経営者の方々にとって、税理士は最も身近な相談相手。何でも話せるパートナーです。そうした関係性ゆえに、税理士や顧問担当者への相談内容も税務や会計の悩みだけに留まりません。どの税理士さんも「人にまつわる相談は後を絶たない」お話しされるほど、人事労務の悩み相談は切り離せないものになっています。

経理や総務といった管理体制が整備されていない小規模な企業の中には、こうした細かな改正に手が回っていないお客様もあるかもしれません。急成長を続けている企業では、採用活動を年単位で行っており、改正時期を越えて行っている求人の給与記載に見直しに見逃しがあるかもしれません。

「県内の新しい最低賃金は〇円で、発効日は〇月〇日からですよ」

そんな一言が、顧問先の安心・安全を守るきっかけになるかもしれません。

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■まとめ

最低賃金の引上げは、事務所や税理士法人にとって人件費だけでなく、採用条件や給与体系、スタッフの定着にも影響する重要なテーマです。改正額や発効日を確認するだけでなく、正社員・パート・アルバイトそれぞれの賃金を最低賃金の計算方法に沿って確認し、給与設定に問題がないか点検する必要があります。

特に税務会計業界では、働くスタッフのステージに応じて時給や月給、年俸など支給体系も異なる人材が集まることが少なくありません。対象となる賃金と所定労働時間を整理したうえで、1時間当たりの賃金に換算することがポイントです。

最低賃金の改正を単なるコスト増として捉えるのではなく、給与体系や採用条件を見直す機会として活用することが、今後の人材確保や採用実績、定着率の向上にもつながるはず。これを毎年巡ってくる良き機会として、上手に利用するのもいいかもしれません。

執筆者プロフィール

田谷 信輔

20年超、税務会計・経理財務部門の採用支援媒体にて、取材ライター&コンテンツ制作者として従事。2500件以上の採用に悩む経営者・採用担当者にインタビューを実施。