生成AIの業務利用は、この2年で会計事務所の間に急速に広まりました。株式会社ミロク情報サービス(MJS)が公表した「会計事務所白書2026」によると、会計事務所における生成AIの利用経験率は2024年度の39%から2026年度には75%へと倍増しています。企業・事業主も55%から84%へ拡大しており、もはや「使うかどうか」ではなく「どう使いこなすか」が問われる段階に入ったといえそうです。一方で、利用ルールの整備やセキュリティ対策は追いついておらず、事務所運営における新たな課題も見えてきました。
■ 利用は急拡大、有料版への投資も進む
今回の調査は、全国の会計事務所(職員含む)212名と、企業のバックオフィス担当者・事業主606名、合計818名を対象に実施されたものです。2024年に行われた同種の調査と比較することで、この2年間の変化を分析している点が特徴です。
(1)会計事務所の利用率が企業を上回るスピードで伸長
会計事務所の生成AI利用率は、2024年度の39%から2026年度には75%へと2倍近くに伸びました。企業・事業主の利用率も55%から84%へ拡大していますが、会計事務所はそれ以上のスピードで浸透が進んでいる点が注目されます。
(2)有料版の利用率は会計事務所が上回る
生成AIを使用している人のうち、有料版を利用している割合は会計事務所が46%、企業・事業主が36%でした。会計業務では正確性や専門性が求められるため、無料版の制約を超えて投資に踏み切る事務所が相対的に多いと見られます。企業側では、個人の判断で使える無料版から始めるケースが多く、組織としての投資判断を伴う有料版導入は今後の課題として残っているようです。
■ 出力内容の確認姿勢に事務所の慎重さが表れる
生成AIが誤った情報をあたかも正確であるかのように出力する、いわゆる「ハルシネーション」への向き合い方にも、業種ごとの違いが見られました。「必ず別の情報源で裏付けを確認してから使用する」と回答した会計事務所は52%にのぼり、企業・事業主の35%を上回っています。顧客の資産や税務情報を扱う業種としての慎重さが、AI活用の姿勢にも表れているといえるでしょう。一方で、企業・事業主の55%は「重要な内容のみ確認する」と回答しており、軽微な情報についてはそのまま使う実態もうかがえます。
■ ルール整備とセキュリティ対策が急務
利用が進む一方で、社内でのルール整備は大きく後れを取っています。生成AIの使用に関するルールが未整備の会計事務所は依然として70%に上り、2023年度調査からの改善は約19ポイントにとどまりました。企業・事業主でも53%が未整備の状況です。従業員が許可なく個人アカウントの生成AIを使う「シャドーAI」が話題となる中、この結果は事務所経営にとって見過ごせないポイントといえます。
利用にあたっての不安要因としては、会計事務所の55%、企業・事業主の48%が「機密情報の漏洩」を最多で挙げました。2024年度調査では「使い方がわからない」といった知識面の課題が上位でしたが、今回は運用リスクへと不安の重心が移っている点が特徴的です。
また、生成AIの整備や導入で困った際の相談先は、会計事務所の74%、企業・事業主の76%が「自分で調べる」と回答し、いずれも最多となりました。事務所内のIT担当者への相談は減少傾向にあり、組織としての相談・サポート体制が整わないまま、個人の情報収集力によって活用度に差が生まれやすい状況がうかがえます。
顧客の機密情報を預かる会計事務所にとって、生成AIの利便性とセキュリティをどう両立させるかは避けて通れない経営課題です。利用率の伸びに満足するのではなく、社内ルールの策定や確認体制の整備を、事務所全体で計画的に進めていく段階に差し掛かっているといえるでしょう。
(画像:株式会社ミロク情報サービスのプレスリリースから引用)
※参考:株式会社ミロク情報サービスプレスリリース(2026年9月17日)
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