税理士事務所や企業の経理部門において、採用や人材育成の場面で頭を悩ませるのが「資格と実務力は必ずしも一致しない」という現実ではないでしょうか。簿記検定をはじめとする資格試験は、会計知識を体系的に測るうえで優れた仕組みですが、実際の現場で求められるのは、資料を前にして何をどう調べ、どこまで正確性を確認し、最終的にどう判断して記帳するかという、一連の「実務の所作」です。この部分は、従来の資格制度では可視化されてきませんでした。
こうした背景から登場したのが、You-A株式会社が8月より提供を開始する会計実務スキル試験「計は会なり -証-(あかし)」です。
■「計は会なり -証-」の仕組みと特徴
(1)実務と同じ条件で受験できる開かれた環境
この試験の最大の特徴は、受験中に調べものをすることもAIを使用することも禁止していない点です。近年は生成AIの普及により、わからないことを調べたりAIを活用したりするのは実務の現場ではごく当たり前の行為になっています。一方で多くの資格試験ではそうした行為が禁止されており、試験環境と実務環境の間にギャップが生まれているのが実情です。
「計は会なり -証-」が測定の対象とするのは暗記した知識量ではなく、資料に向き合った際の調べ方・確かめ方・判断の進め方そのものであり、実務の力量を映す評価軸に沿ったものといえるでしょう。
(2)仮想会社のひと月分の資料を使った実践形式
試験では、預金明細や請求書、領収書、給与支給控除一覧表など、実務で日常的に扱う資料一式が仮想の会社の形で用意され、試算表の作成までを実際の業務手順に沿って行います。受験開始から30日以内に提出すればよく、所要時間の目安は6時間、分割しての取り組みも可能とされています。
(3)合否ではなく「鑑定書」で所作を記述
この試験には合格・不合格という判定がありません。代わりに、8つの軸で受験者の実務の所作を記述した鑑定書「判断の肖像」が一人ひとりに発行されます。発行された鑑定書は、専用ページで真正性の確認もできる仕組みになっています。
受験料は先行価格として9,800円(税込・2026年8月末までの申込分)、9月以降は14,800円(税込)が予定されています。
■税理士・会計事務所にとっての意味合い
税理士・会計事務所にとって、採用面接や実務未経験者の見極めは常に悩ましいテーマです。資格の有無だけでは実務適性を判断しきれず、結局はOJTを通じて手探りで見極めていく事務所も少なくないでしょう。今回のような「実務の所作」を可視化する試みは、採用時の判断材料としてはもちろん、既存スタッフの育成方針を考えるうえでも一つの参考軸になり得ます。
もっとも、この試験自体はまだ第一期の実施段階であり、評価の客観性や業界内での認知度は今後の運用実績によって定まっていく部分も大きいと考えられます。とはいえ、AI時代における「実務力」の定義そのものを問い直す試みとして、経理・会計分野の人材評価のあり方に一石を投じる取り組みといえそうです。今後、測定結果が統計データとして公表される予定もあり、業界としての評価基準づくりにどうつながっていくか、注目しておきたいところです。
(画像:You-A株式会社のプレスリリースから引用)
※参考:You-A株式会社プレスリリース(2026年7月31日)
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