2026年1月1日、下請法が改正され「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行されました。これまでの「支払サイトを60日以内にする」という規制から一歩踏み込み、対象となる取引では手形払いそのものが原則禁止となり、現金振込または60日以内の電子記録債権への移行が求められています。あわせて、これまでの資本金基準に加えて「従業員300人超(製造委託等)」「従業員100人超(情報成果物作成委託・役務提供委託等)」という従業員基準が新設されたことで、資本金が小さくても対象になる企業が大きく増えています。
さらに、紙の手形・小切手そのものも姿を消しつつあります。全国銀行協会は2026年度末までに手形交換所での交換をゼロにする目標を掲げていますが、多くの金融機関は前倒しで2026年9月30日を紙の手形・小切手の最終振出期限に設定しています。つまり「取適法への対応」と「紙手形の廃止」という2つの動きが同時並行で進んでおり、手形取引がある企業は待ったなしの対応が必要な局面にあります。ここで考えないといけないのは「手形発行者」「手形受取者」両面での対策です。
■手形発行者側の対策→運転資金の増加に備える
これまで手形で支払っていた事業者が、現金振込(または短期の電子記録債権)への切り替えを迫られると、単純に支払いが早まります。
運転資金の計算式で考えると
「運転資金」=「売掛金」+「在庫」-「買掛金」
差し引く「買掛金」の支払いタイミングが早まることから、運転資金の必要額は増えます。仮にこれまで120日サイトの手形で支払っていた事業者が、60日以内の現金払いに切り替われば、平均の月の仕入額のおおよそ2か月分は運転資金がさらに必要になります。
そこで「運転資金の増加分を資金調達する」か「売掛金の回収サイトを短縮する」のが対策になります。また、運転資金を調達するにしても「長期借入」で調達しても効果は薄くなります(返済を行っていくため)。そこで、資金調達で支払いの現金化分を埋めるには「短期転がし資金」が理想形になるという考え方自体は、以前と変わりません。
■手形受取業者側の対策→取引先の対応状況に気を付ける
取適法により手形払いは原則禁止となったため、これまで受取手形を割り引いて資金化していた事業者は、そもそも手形を受け取れなくなる可能性があります。「裏書譲渡」で決済していた場合も、同様に対応が変わる可能性があります。取引先(発注元)が取適法の対象事業者に該当するか、また紙の手形・小切手の最終振出期限(多くは2026年9月30日)をどう捉えているかについて、早めにヒアリングしておくことが必要になります。
つまり、受け取り側で受注先の支払方法の対応について早めの情報収集が必要で、仕入先や外注先への対応についても検討しておくことが必要です。
■対象企業の範囲が広がっている点にも注意
今回の改正では、従来の資本金基準に加えて従業員基準が新設されたことで、「資本金は大きくないが従業員数は多い」という企業も新たに規制対象に加わりました。自社が委託する側・受託する側のどちらであっても、取引先の資本金だけでなく従業員数も確認しておく必要があります。「うちは資本金基準で対象外だったはず」という従来の判断が、今回の改正で通用しなくなっているケースがある点は見落とされがちなので、あらためて確認をお勧めします。
このように今回の改正・紙手形の廃止は中小企業の資金繰りに大きな影響を与えます。紙の手形・小切手の最終振出期限が目前に迫っている金融機関も多いため、手形取引がある先には即座の対応が必要になります。
参考出典
公正取引委員会・中小企業庁「取適法リーフレット」
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
公正取引委員会・中小企業庁「取適法リーフレット」、政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9983.html
全国銀行協会「手形・小切手機能の全面的な電子化に関する周知・広報活動について」
https://www.zenginkyo.or.jp/news/2026/n060501/