銀行からの借入の年間返済額と、会社が生み出すキャッシュフロー(以下CF)が合わないケースは、中小企業では珍しくありません。今回は、そのような状態にどう向き合い、どう対処すればよいのか、そしてその対処法の柱となる「短期コロガシ」を実際に銀行に認めてもらうために何が必要かを、あわせてお話しします。
2026.8.21
銀行からの借入の年間返済額と、会社が生み出すキャッシュフロー(以下CF)が合わないケースは、中小企業では珍しくありません。今回は、そのような状態にどう向き合い、どう対処すればよいのか、そしてその対処法の柱となる「短期コロガシ」を実際に銀行に認めてもらうために何が必要かを、あわせてお話しします。
目次
例えば以下のような状態の会社があったとします。
従前の銀行への年間返済額 10M > 会社の生み出すCF 5M → 差額 ▲5M
このような状態で追加の借入をしなければ、手元の預金が5M減っていきます。経営者は預金が減っていることに慌てて追加の借入をしがちですが、ここで追加の借入を10M(期間10年)した場合、新たな借入10M分の返済(年間返済1M)も加わるため、銀行への返済額は11Mになります。
従前の借入の返済が終われば減っていきますが、まだ減らない状態だと、
新たな銀行への年間返済額 11M > 会社の生み出すCF 5M → 差額 ▲6M
CFが変わらない前提でも、年間返済額は増えていくため、さらに手元預金は減っていくことになります。「据置期間を使えばいいのでは」という考え方ももちろんありますが、据置期間の間にCFを増加させる絵がきちんとあるかが大きなポイントになります。
CFの拡大が見込めない場合には、以下の2つの選択肢で考えます。
追加で借入できる財務内容とは、銀行の債務者区分でいう「正常先」の状態です。正常先の場合は、借入の中身を「正常な運転資金」と「運転資金以外」の2つに分解します(正常な運転資金とは「売掛金+在庫-買掛金」)。正常な運転資金の部分は、返済のない「短期コロガシ」にシフトし、運転資金以外の借入をCFと同等の年数の範囲に組み換えることができれば、CFとのバランスが取れます。
従前の銀行への年間返済額 10M > 会社の生み出すCF 5M → 差額 ▲5M
↓
「正常な運転資金」返済額「0」+「運転資金以外」返済額「5M」=CF 5M → 差額 ±0
追加の借入ができない状態とは、「赤字」+「債務超過」=「要注意先」以下の区分になっている状態です。この場合には、基本的には早めの「リスケ」をお勧めしています。
もちろん、来期に黒字化が間違いなく可能で、債務超過も3年以内に解消できる絵ができるのであれば、リスケを回避する方法も考えます。しかし赤字が続けば手元資金が減るだけになり、リスクはかなり高くなります(追加で借入ができる状態か否かの判断は、専門家にアドバイスを聞くことをお勧めします)。「CFがあるからリスケなんてしなくてもいい」という意見もありますが、大事なのはCFと返済額のバランスにあることを強く意識してください。
なお、リスケを行うと原則として「貸出条件緩和債権」の扱いとなり、債務者区分は「要管理先」に格付けされます。実現可能性の高い経営改善計画(実抜計画・合実計画)を伴えば「要注意先」へのランクアップが見込めますが、それでも上限は要注意先までであり、正常先に戻ることはありません。逆に、計画どおりに改善が進まなければ、要管理先からさらに下位の区分(破綻懸念先以下)に格下げされる可能性もあります。リスケを行った時点の格付けがそのまま固定されるわけではなく、その後の経営改善の実績次第で変動しうる、という点を押さえておいてください。
(1)で触れた「短期コロガシ」ですが、これは銀行にお願いすれば自動的に認められるものではありません。
銀行の考える「運転資金」の算出式は前述のとおり「売掛金+在庫-買掛金」ですが、この式から出るお金を短期コロガシで借りるには、融資を受ける金融機関の口座で「売掛金+在庫-買掛金」のお金の動きを実際に行うことが条件になります。
具体的には、
●売掛金:販売先から入金される口座に指定すること
●在庫:仕入にかかる支払い口座の元受に指定すること(元受とは支払の元になること)
●買掛金:仕入以外にも人件費・家賃などの固定費の支払の元受に指定すること
ざっくり言えば、事業活動の「カネ」の動き(入と出)を、融資を受ける金融機関の口座で行うことが必要になります。これを金融機関では「付帯取引」と呼んでおり、融資以外の取引ができているかどうかは審査上の重要なポイントになります。貸出稟議書にも、月中入金額・月中支払額・給与元受口座の状況・従業員の口座保有数といった取引履歴が記載されます。
複数銀行と取引している場合には、基本原則として「融資シェア」で分けます。ただし給与支払いや買掛支払いの機能を複数金融機関に分散させるのは経理事務が煩雑になるため、分散させるなら「売掛金」の入金先をシェア割りするのが一番やりやすい方法です。銀行への説明でも「売掛金を借入残高でシェア割りしているので、必要な運転資金もシェア応分で融資をお願いします」という言い方ができます。
さらに、「融資シェア」といっても、保証協会保証融資しか出さない銀行と、金額は少なくても「プロパー」を出している銀行がある場合は、プロパーを出している銀行を優先すべきです。その場合は「融資残高シェア」というより「プロパー残高シェア」で入金先を分けることをお勧めします。
融資は「借りるだけ」「返すだけ」の取引では進展しません。CFと返済額のバランスを整える際にも、こうした「付帯取引」の中身にまで目を向けることが、銀行との信頼関係づくりにつながります。
※参考にした公式出典
金融庁「金融検査マニュアル 新旧対照表(別紙3)」(正常な運転資金の算定式・債務者区分の扱いに関する記載)
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1/03.pdf
金融庁「資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト」関連資料(債務者区分の定義)
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/manual_yokin/14.pdf