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2026.7.24

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識【No.19】貸出金利の引き上げが本格化、政策金利1.00%時代にどう備えるか

徳永 貴則

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識【No.19】貸出金利の引き上げが本格化、政策金利1.00%時代にどう備えるか

日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、段階的に利上げを進めてきましたが、2026年6月の金融政策決定会合でついに政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げました。これは約30年ぶりの高水準です。

この動きを受けて、銀行の貸出金利の引き上げは新規融資だけでなく既存融資にも広がっており、メガバンクだけでなく地方銀行でも金利引き上げの動きが一段と活発になっています。企業としても、この「金利のある世界」にどう向き合うか、あらためて考える時期に来ています。今回は金利引き上げの背景と、企業側の備え方についてお話していきます。

■金利が上がるのは根拠がきちんとある

銀行の貸出金利を構成する要素は以下の4つが主にあります。

①調達コスト(銀行が商品である「お金」を仕入れるコスト)
②事務コスト(人件費等のコスト)
③信用コスト(債務者の信用力に応じたコスト)
④利益

2024年のマイナス金利解除以降の一連の金利引き上げの主たる理由は、引き続き「①調達コスト」の上昇にあります。貸出金の原資で大きなものは「預金」ですが、預金金利は既に段階的に引き上げられており(メガバンクの円普通預金金利は2026年時点で0.3%程度まで上昇)、お金を仕入れるコストが上がっています。あわせて、市場調達が可能な金融機関でも調達コストが上がっていることから、企業への「価格転嫁」が続いているといえます。

金利引き上げのもう一つの大きな理由が「③信用コスト」の上昇です。信用コストとは企業の信用格付に応じた引当コストのことで、年2回程度見直されますが、近年は倒産件数の増加に伴い上昇傾向が続いています。2026年上半期の全国企業倒産件数は5,335件で前年同期比6.6%増となり、4年連続の増加を記録しました。特に、仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できずに経営が行き詰まる「物価高倒産」は556件と、半期として過去最多を更新しています。物価高、人手不足、円安による輸入コストの上昇などが企業業績に影響を及ぼしており、業績が悪化した企業では信用格付けがランクダウンし、引当コスト分の金利転嫁を求められるケースが増えています。

つまり、現在の金利引き上げの背景には、当初からの「仕入れコスト」の上昇に加え、倒産増加や物価高を反映した「信用力コスト」の上昇が、より強く作用してきているといえます。帝国データバンクの試算では、企業の借入金利が現状から0.25%上昇した場合、経常赤字に転落する企業は全体の1.6%(約1,700社)にのぼり、上昇幅が1.00%に達した場合には3.3%(約3,500社)まで拡大するとされています。

■複数銀行で常に金利を意識した借入をすること

このような状況下で、企業側としてはどのような対策をしていかなければいけないのか。

・取引先への適正な価格転嫁を行い、利益率の好転を図る
・社内の効率化を図り、人員増だけに頼らないビジネスモデルを構築する
・取引銀行間でも金利競争意識を働かせることで、銀行の言いなりにならない交渉力を身に着ける

大きくはこの3点が必要になります。

「調達コスト」の引き上げに対しては、無理に拒んでいると銀行側としても「取引解消やむなし」の烙印を押される可能性がありますので、市場金利の引き上げに対してはある程度はやむを得ないと考えるべきです。政策金利は市場予想では2026年内にさらなる引き上げの可能性も指摘されており、金利のある世界は今後も続いていく前提で資金計画を立てる必要があります。

それ以上に大切になるのは「信用コストの引き上げ」、つまり「企業側の責任で引き上げを言われないようにする」ことです。金利引き上げの要請を銀行から受けた場合に、金利が上がる理由は①か③のどちらの理由が大きいのかについてもよく銀行と話を重ねることが必要になりますし、何よりも自身の業績改善が金利引き上げを抑制する最大のカードになることを認識しておいてください。

※参考出典

ニッキンONLINEの記事
https://www.nikkinonline.com/article/353552

全国企業倒産集計 2026年上半期報(1月〜6月)
https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260708-bankruptcyh12026/

「物価高倒産」の動向(2026年上半期)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260707-inflationbankruptcy2606/

日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査(2025年12月)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20251219-increase25y/

執筆者プロフィール

徳永 貴則

平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。