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2026.7.24

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識【No.18】預金残高が「月商1か月分」まで減少した時に検証すべきポイントは

徳永 貴則

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識【No.18】預金残高が「月商1か月分」まで減少した時に検証すべきポイントは

預金残高はどのくらいあったほうがいいのか?との質問をよく受けますが、「多くあるに越したことはない」というのが私の考え方です。しかし、預金残高がいくらまで減っていると危ないか?の質問に対しては答えが決まっており、「月商1ヶ月分を切ったら危険水域です」と答えております。

今回は危険水域としている「預金残高が月商1か月分を切った場合」に考えるポイントについてお話しさせて頂きます。

■預金の減少には大きく3つの理由がある

手元預金が減少する理由としては大きく分けて下記の3つの理由が挙げられます。(まだ他にも理由があるケースがありますが、今回は省略します)

①運転資金の増加により手元資金が減ってきている

「運転資金」=「売掛金」+「在庫」-「買掛金」で算出される金額は、会社が赤字であろうが、債務超過であろうが、事業を継続するには必ず必要になるお金です。

例えば、売上が増加しているのに、運転資金の借入を増やさなければ、「売掛金」増加分に相当する手元資金は減少しますし、「在庫」が増えれば、その分手元資金は減少します。

つまり、「売上の変化に対応した資金調達を行えていない」場合に、預金残高が減少しているはずです。

②銀行返済額がCFより大きい

例えば

  • 銀行への年間返済額が10M
  • 年間の創出CFが5M

だとします。この状態だと 5-10M=▲5Mとなり、手元資金は減少します。

ただし、①にあるように「運転資金」は常に借り続けておく必要があることから、銀行の年間返済額10Mのうち、運転資金に相当する返済に対しては「折り返しで借りる」ことを行えば、手元資金の減少を防げます。つまり、「借入の中身と返済の中身を理解していない企業」は預金残高の減少を招くと言えます。

③赤字が続いている

これは当然のことですが、赤字が続いて、赤字を止める企業努力を行っていなければ、預金残高は減少します。さらに、赤字が続いていることから銀行からの借入もできなくなり、さらに手元預金の減少を招くことになります。つまり、企業として無策のまま時間だけが過ぎ、預金残高の減少となっていると言えます。

この上記①~③以外にも、例えば設備投資を自己資金で行った場合にも預金残高の減少を招くことになりますが、①~③に共通しているポイントは「預金残高の減少理由を把握できていない」ことが挙げられます。預金残高が月商の1か月分まで落ち込むと、受注が増加・減少したりなどの変化に対応できないことになります。

■預金残高1ヶ月まで減少したら基本的には「リスケ」を

私としては、預金残高1ヶ月まで減少したら基本的には「リスケ」を行い、その時間の間に何が原因かを検証する時間を作ることを勧めています。「リスケ」とは、金融機関と協議のうえ、借入金の返済条件(毎月の返済額や返済期間など)を見直してもらう正規の手続きのことで、経営改善計画とセットで進めるのが基本です。

仮に、①の理由だけであればリスケの必要はありませんが、実際には①の理由だけで預金残高が1ヶ月まで減少するケースは少なく、実際には②と③の理由が重なっているケースが多くなっています。

なお、自社での判断が難しい場合には、47都道府県に設置されている公的機関「中小企業活性化協議会」に無料で相談することも選択肢の一つです。金融機関との条件変更(リスケジュール)の調整や、経営改善計画の策定支援を、公正中立な立場から受けることができます。皆さんにおかれましても、「預金残高1ヶ月=危険水域」をメルクマールにしてくれればと思います。

※参考出典
J-Net21(中小企業庁関連・中小企業基盤整備機構運営)「リスケジュールについて教えてください」
https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/financeqa/Q0702.html

執筆者プロフィール

徳永 貴則

平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。