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2026.5.29

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識 【No.15】銀行の融資事務が取引店以外で行われると、企業にどんな影響があるか

徳永 貴則

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識 【No.15】銀行の融資事務が取引店以外で行われると、企業にどんな影響があるか

みずほ銀行が2023年から始めた「支店事務のボーダレス化」が全国へ広がっています。銀行側の効率化を目的とした動きですが、融資を受ける企業側にとっても無関係ではありません。何が変わり、企業はどう対応すべきかを整理します。

■「支店事務のボーダレス化」とは何か

支店事務のボーダレス化とは、融資稟議の作成・信用格付・担保管理といったバックオフィス業務を、取引支店ではなく「融資に特化した支店」に集約する仕組みです。背景には地方店舗を中心とした人手不足と店舗の統廃合があります。担当者が急に退職・異動しても、周辺店がカバーし合うことで支店運営を継続できる体制を整えることが狙いです。

■企業側から見たときの懸念点

・担当者以外が稟議や信用格付を行うことで、企業ごとの事情が正確に反映されるか不安が残ります。
・数字だけをもとにした機械的・画一的な判断になるリスクがあります。
・急な資金ニーズや相談に、スピーディーに対応してもらえなくなる可能性があります。

特に融資の肝となる「信用格付」では、数字の裏にある背景や企業ごとの特性など「定性的な情報」が評価されにくくなる点が最大の懸念です。

■企業がすべきこと:「事業性評価」に基づく情報発信と関係構築

この流れはみずほ銀行だけにとどまりません。人手不足や店舗統廃合はメガバンクに限らず地域金融機関でも共通の課題であり、同様の動きが広がることが予想されます。さらにAIの進化により、稟議作成の自動化も現実的になってきています。

こうした時代の変化のなかで企業が取るべき対策は、自社のビジネスモデルや経営の実態を積極的に銀行へ発信していくことです。数字だけでは見えない企業の強みや将来性(SWOTなど)を、銀行が正しく評価できる形で伝えることが重要になります。

具体的な手段としては、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けて「早期経営改善計画」を策定し、金融機関に提出することが有効です。この制度は「早期経営改善計画策定支援事業(ポストコロナ持続的発展計画事業)」として中小企業庁が推進しており、計画策定費用の3分の2が補助されます。ほとんどの会計事務所は認定支援機関として登録されており、顧問先企業と連携してこの役割を担うことができます。

また、担当者との「関係構築」を意識的に行うことも重要です。事務が集約されても、融資の窓口担当者は引き続き取引支店に置かれるケースが多いため、日頃から経営情報を共有し、担当者に自社を深く理解してもらう関係をつくっておくことが、定性評価を守るうえで現実的かつ有効な対策になります。

さらに、事業全体を担保とする新しい制度「企業価値担保権」(2024年6月成立、2026年5月25日施行)においても、事業性評価がキーワードになります。決算書だけを提出するスタイルでは、今後の融資審査では通用しにくくなっていきます。

■まとめ

銀行事務のボーダレス化・AI化が進むほど、企業側からの能動的な情報発信の重要性が高まります。

・認定支援機関と連携して早期経営改善計画を策定・提出する
・ビジネスモデルや強みを「見える化」し、定性情報として銀行に伝える
・日頃から担当者と経営情報を共有し、信頼関係を築いておく
・決算書の提出だけで終わらず、事業性評価に基づいた対話を意識する

数字で評価されにくい時代だからこそ、数字以外の情報を伝える仕組みと関係性を自社で整えておくことが、融資を継続的に受けるための鍵になります。

執筆者プロフィール

徳永 貴則

平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。