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2026.5.1

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識 【No.12】バーチャルオフィスを本店にすると融資は受けられるのか?

徳永 貴則

税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識 【No.12】バーチャルオフィスを本店にすると融資は受けられるのか?

バーチャルオフィスは創業期のコスト削減手段として広く普及しています。一方で、銀行口座の開設や融資となると話は別です。この記事では、バーチャルオフィスを本店としている場合に融資取引が可能かどうかを、金融機関ごとの実情も踏まえて解説します。

■口座開設の現実:ネット銀行が最も現実的

法人口座の開設にあたって、金融機関は「事業の実態があるか」を厳しく確認します。バーチャルオフィスは物理的な事業拠点を持たない形態のため、マネーロンダリング(マネロン)防止の観点から審査が厳しくなる傾向があります。

実態として、口座開設のハードルは銀行の種類によって大きく異なります。メガバンクは審査が最も厳格で、事業実績・事業計画書・資本金(目安:100万円以上)・固定電話番号などが揃っていないと難しいケースが多いです。地銀・信金は支店のスタンスによって対応が分かれます。

融資を前提としない場合は、ネット銀行(GMOあおぞらネット銀行、楽天銀行など)が最も現実的な選択肢です。ネット銀行はバーチャルオフィス利用者に比較的柔軟に対応しており、開設実績も多数あります。

■融資を受けるなら日本政策金融公庫が最有力

創業期に外部からの融資が必要な場合、バーチャルオフィスであることへの理解がある金融機関として、日本政策金融公庫(以下、公庫)が最も現実的な選択肢です。公庫は「バーチャルオフィスというだけで融資を断ることはない」という方針で、事業計画の内容と返済可能性を中心に審査します。

政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、スタートアップへの投資額を10倍にする方針を掲げています。これを踏まえ、公庫もスタートアップ支援を強化しており、制度も拡充されています。

※補足説明
2024年4月から公庫のスタートアップ向け融資制度が大幅拡充されました。従来「新創業融資制度」と呼ばれていた制度は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合(2025年3月)。無担保・無保証で最大7,200万円(旧:3,000万円)の融資が可能になり、自己資金要件(従来は創業資金総額の1/10以上)も撤廃されました。

ただし、なぜバーチャルオフィスを選ぶのかという理由と、具体的な事業計画を明確に説明できることが前提です。事業内容がバーチャルオフィスと合理的に整合している場合(例:ITエンジニアとして客先常駐で業務するケースなど)は、審査官に納得してもらいやすくなります。

■公庫以外の資金調達の選択肢

公庫融資以外で資金を調達する場合、以下の2つが選択肢になります。

① 保証協会保証付き融資(自治体あっせん融資)

本店所在地の市区町村が実施する「あっせん融資」を活用する方法です。ただし民間銀行の口座が必要になるため、まず口座開設が前提となります。飛び込みでの相談が難しい場合は、税理士などの紹介を通じると審査の通過率が上がる傾向があります。

② スコアリング融資(口座履歴審査型)

ネット銀行系のスコアリング融資(AI融資)は、決算書ではなく口座の入出金履歴をもとに審査します。事業が動き始めてから一定期間経過した後に活用しやすい選択肢です。

■バーチャルオフィスで起業するなら借入依存を避けること

以上のとおり、民間銀行との融資取引は依然としてハードルが高いのが実情です。創業期から銀行融資が必要なビジネスモデルの場合は、バーチャルオフィスでの起業には慎重になることをおすすめします。

最小限のコストで事業をスタートできるのであれば、まずネット銀行で口座を開設し、事業が軌道に乗った段階でリアルオフィスに移転したうえで融資取引にチャレンジするという流れが現実的です。

起業前に「何のためにバーチャルオフィスを使うのか」「資金調達の必要性はどのくらいか」を整理しておくことが、後のトラブルを防ぐ最善策です。

執筆者プロフィール

徳永 貴則

平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。