税理士の皆様向けに、クライアント企業から資金繰りについて相談された際にアドバイスできる知識をお届けする連載コラムの第1回です。
経営者から資金面の不安をよく聞かれませんか?
税務には精通していても、銀行融資や資金調達の実務に明るくない税理士の方は少なくありません。本コラムで銀行の内部事情や交渉のポイントを理解することで、クライアントへの付加価値を高め、他の税理士との差別化を図ることができます。ぜひご活用ください。
2025.10.30
税理士の皆様向けに、クライアント企業から資金繰りについて相談された際にアドバイスできる知識をお届けする連載コラムの第1回です。
経営者から資金面の不安をよく聞かれませんか?
税務には精通していても、銀行融資や資金調達の実務に明るくない税理士の方は少なくありません。本コラムで銀行の内部事情や交渉のポイントを理解することで、クライアントへの付加価値を高め、他の税理士との差別化を図ることができます。ぜひご活用ください。
目次
短期プライムレートが引き上げられる時代となり、銀行の経営スタンスも大きく変化しています。2024年3月に約17年ぶりに短期プライムレートが引き上げられ、その後も金利上昇基調が続いています。
この環境変化の中で、銀行が最も注力しているのが「預金」の獲得です。銀行にとって融資の最大の原資は預金であり、預金が集められなければ融資を拡大することができません。
預金獲得の中心は個人預金ですが、最近では法人に対しても預金取引の依頼が増加しています。今回は、融資取引のある銀行から法人預金を求められた場合の適切な対応方法についてご説明します。
融資取引のある法人に対して預金を求めるのは、単なる「預金集め」が目的ではなく、融資審査の観点から正当な理由があります。
法人に対して運転資金として融資をしている場合、必要運転資金は「売掛金+在庫−買掛金」という計算式で算出されます。銀行としては、売掛金・在庫・買掛金といった資金の動きを、融資を実行した銀行の口座で行うべきと考えています。
【具体的な依頼内容としては】
融資を受けている銀行の担当者からこのような依頼を受けたことがある方も多いと思いますが、これは融資審査の観点からは「基本」であり、決して不当な要求ではありません。
しかし、実務の現場では次のような課題があります。
このような経理部門の負担を考慮すると、現実的な対応が難しいケースも多くあります。
そこで、銀行からは「預金を置いてもらえないか」という提案がなされることがよくあります。
【流動性預金】:いつでも引き出し可能な預金で、「当座預金」「普通預金」を指します
【固定性預金】:一定期間解約できない「定期預金」を指します(期限前解約も可能ですが制約があります)
銀行からの要請に応じる場合、どちらを選択すべきでしょうか?
推奨は「流動性預金」です。
【理由】
ただし、流動性預金を置く際の目安設定が必要になります。
推奨する設定方法:月平残(毎月の平均残高)を○○円にするという方式
※月平残は銀行内部での管理指標であり、企業側にはあまり馴染みのない言葉ですが、「月間平均残高」と同義です。
※上記○○円に入る月平残の金額は銀行より指定があります。
「平均」がポイントです。月の中で残高が増減するのは当然のことで、仮に「○○円以上は必ず残高を置く」という約束にしてしまうと、その預金は実質的に固定化され、使えなくなってしまうからです。
月平残は「(1日の残高 + 2日の残高 + ... + 末日の残高) ÷ その月の日数」で計算されます。例えば、月平残1,000万円で銀行と約束した場合
| 5日 | 給与支払いで残高が700万円に減少 |
| 15日 | 売上入金で残高が1,500万円に増加 |
| 25日 | 仕入代金支払いで残高が800万円に減少 |
このように日々変動しても、「月の平均が1,000万円になればOK」という約束です。資金繰りの柔軟性を確保できます。
一方、最低残高方式の場合は「常に1,000万円以上は必ず口座に残しておく」という約束になります。この場合、どんなに資金が必要でも1,000万円には手をつけられず、実質的に1,000万円が「使えないお金」として固定化されてしまいます。
結果として「給与の一部が遅配になる可能性」「仕入先への支払いが滞り、信用を失う」「別途資金調達が必要になり、余計なコストが発生」などのリスクがあります。
ゼロ金利時代が終わり、預金取引の重要性は改めて見直されています。もし銀行から預金取引の依頼を受けた場合には、その理由と背景を理解したうえで、自社にとって何が最も利便性が高いかまで検討することをお勧めします。
次回は【No.2 借入返済負担を軽減するために借入の繰り上げ返済をすることの是非は?】 です。お楽しみに!