税理士試験に限らず、社会人が資格勉強を始めると、多くの人が途中で挫折してしまいます。実際、税理士試験は科目合格制とはいえ、合格まで数年単位の長い時間がかかることも珍しくありません。
税理士試験の勉強を始める人は多いですが、数年後も続けている人は一気に減ります。最初はみんなやる気があります。新品の理論集を開いて、「今年こそは」と思う。でも、気づくと教材が机の隅に積まれていく。
私自身も働きながら勉強を続けていましたが、その過程で感じたのは、「勉強が続く人と続かない人には、ある程度共通した特徴がある」ということです。ここでは、その違いを三つの視点から整理してみたいと思います。
■わたしが税理士資格を取得するまで
わたしが税理士資格を取得しようと思ったのは30歳のころ。市役所の税務課で仕事をする中で、いつかは独立したいと思ったからでした。市役所で働いていると、別の課に移動になった場合はまた一から実務を覚えていく必要があります。そういった働き方に疑問を持ったこと、さらに実家が個人事業主だったこともあり、年齢に捕らわれず自由な働き方をしたいという想いが募ったことが理由でした。
そこでまずは簿記から勉強を始めました。わたしは通信教育を利用して自分で勉強を進めていたのですが、SNSに投稿している税理士受験生の学生の方と比べると圧倒的に勉強時間が短く、やはり社会人は不利な部分があると実感しました。最終的には10年かけて5科目に合格し、税理士として独立を果たしましたが、仕事をしながらの勉強では何よりも勉強時間の確保がカギだったと思います。
逆に有利だった点としては、わたしの場合は市役所の税務課での仕事で税理士登録に必要な実務要件を満たせたこと。また仕事内容が試験に直結していたため、勉強面での理解も深まったことでしょうか。
■税理士資格の勉強が続く人の特徴3つ
(1)勉強する理由をモチベーションに“頼らない”
まず最も大きな違いは、モチベーションへの依存度です。資格勉強を始めたばかりの頃は、誰でも意欲が高いものです。しかし税理士試験のように長期戦になる試験では、仕事やプライベートの事情など、勉強以外のいろいろな事情が生じます。
忙しい時期、試験結果が思うように出なかった年、家庭環境が変わったときなど、勉強の優先順位が下がる局面は必ず訪れます。このとき「やる気があるときだけ勉強する」というスタイルだと、勉強はすぐ止まってしまいます。
一方で、長く続く人は「やる気に関係なく勉強する仕組み」を作っています。例えば、平日は必ず30分はテキストを開く、通勤時間は理論暗記に使う、休日の午前中は勉強時間と決める、といったように、勉強を習慣として固定しているのです。
やる気に関係なく継続するために私が実践していたことは、勉強時間ゼロの日を作らないことです。正直、眠い日もあります。飲み会のあと、テキストを見る気力すらない日もあります。それでも「今日はゼロだった」を作らない。理論集を1ページ、1行だけでも読む。それだけで、不思議と翌日以降の継続につながります。
(2)「なぜ税理士になりたいのか」が具体的に言語化されている
次に大きいのが、合格後のイメージの明確さです。
税理士試験は、努力の成果がすぐに収入や地位に反映される資格ではありません。数か月頑張れば成果が出る試験でもなければ、合格した瞬間に人生が劇的に変わる資格でもありません。むしろ、数年単位で働きながら勉強を続け、それでも結果が出る保証はないという、かなり特殊な試験です。だからこそ、「なんとなく将来のために勉強している」という状態では、途中で気持ちが揺らぎやすくなります。
一方で勉強が続く人は、「独立したい」「専門家として、自分の判断で仕事をしたい」「特定の分野を極めたい」「場所や時間に縛られない働き方をしたい」「地元で事業者の支援をしたい」等々…内容は人それぞれですが、「なぜこの試験を受けるのか」が自分の中で言語化されています。
わたし自身は、組織で働くことの楽しさは感じていましたし、多くの経験をさせてもらい、尊敬できる方々にも出会いました。ただ、どこかでずっと違和感がありました。本当はこうしたほうが良いのでは、なんでこんな非効率なことをやるんだろう、と思うこともありました。組織だから当然です。
でも、そんな感覚が年齢を重ねるにつれ少しずつ大きくなっていきました。将来的には自分の判断で仕事がしたい、自分が良いと思える仕事を、自分の責任で行いたい。それが勉強を続ける大きな動機になっていました。
逆にいえば、やりがいのある仕事、尊敬できる上司や同僚、十分な待遇であれば、税理士試験を続けることは困難かもしれません。10年20年後に自分がなりたい姿がそこにあるでしょうか? 資格取得や独立開業そのものが成功だとは思いませんが、もし、少しでも違和感があるのだとすれば、その感覚は無視しないほうが良いと思います。どんな働き方、どんな人生を送りたいのか、そんなことも考えさせられる試験なのかもしれません。
(3)生活に勉強が組み込まれている
最後に重要なのは、勉強と生活の関係の考え方です。
社会人の場合、仕事・家庭など、生活の中で優先すべきことは多くあります。
「時間ができたら勉強する」は、だいたい失敗します。例えば、通勤時間や昼休みは理論暗記、朝食前に30分だけ机に向かう、といったように、短時間でも生活の中に勉強を固定していきます。
朝、顔を洗う、はみがきをするなどのように、その時間、タイミングになったら、自動的に勉強をはじめる、やらないと気持ちが悪いと思えるような勉強習慣を作りましょう。
税理士試験は短距離走ではなく、長距離走に近い試験です。そのため、一時的に大量の勉強時間を確保するよりも、生活の中で長く続く仕組みを作ることの方が重要なのです。
わたしの直前期のスケジュールで説明すると、平日は朝4時起床、7時くらいまで勉強。昼は、昼食のあと30分ほど散歩しながら理論暗記。夜は時間の調整が予定に左右されてしまうため、あまり勉強時間としてはあてにせず、9時までにベッドに入れるように努力していました。これで、平日3~4時間弱は確保できます。
休みの日は同じ時間に起きて、午前中だけで5~6時間は勉強できますし、午後は勉強をしてもよいし、他の予定をいれることもできます。午前中に勉強時間が確保できていれば、気持ちも楽になるのではないでしょうか。
【勉強時間のスケジュール例】
社会人にとって、自分で自由にできる時間は貴重です。朝4時に起きるのは、最初は正直きつかったです。何度も二度寝しました。冬は真っ暗ですし、布団から出たくない。起き上がるまでに30分くらいスマホを見ていたこともあります。
それでも夜は仕事や予定に左右されますが、朝は比較的裏切りません。だから、少しずつ朝方に寄せていきました。ほかの予定や家族の迷惑にならないためにも、朝の時間を有効に使う。そのためにも睡眠時間を削るのではなく、なるべく早く寝ることが大事になります。
この習慣は完全に身についており、税理士になった今でも朝は5時には起きて自己研鑽の時間に充てることができています。
■8月の税理士試験から11月末の合格発表までの過ごし方にも注意を
税理士試験は年1回のため、どうしても試験が終わるとダラける気持ちが出てきてしまいます。わたしは簿記論、財務諸表論、所得税、消費税、相続税の順番で取得したのですが、簿記論以外は試験が終わった時点で「これはダメそうだな」「これは合格したな」というのが手ごたえでわかりました。もし残念な結果だった場合、再度勉強に専念するわけですが、11月末の実際の合格発表までに、せっかく定着してきた勉強習慣を手放してはいけません。
そこでわたしは試験後、日商簿記や宅地建物取引士の勉強をしていました。日商簿記も宅建も10月に試験があります。税理士資格を補強するための知識にもなりますし、ちょっとした気分転換にもなります。また10月に試験があるという先の予定を確定させることで、気持ちが途切れないという効果もありました。
わたしの場合は資格の勉強でしたが、税務から離れないよう、みなさんもぜひ工夫をしてみてください。
■まとめ
今回は、社会人で税理士試験の勉強が続く人・続かない人の違いを解説してみました。税理士試験は、才能よりも「やめなかった人」が最後に残る試験だと思っています。無理に追い込みすぎて燃え尽きるより、自分なりのペースで長く続けること。結局、それが一番強いのかもしれません。