常に変化を続ける市場や経営環境に適応し、税務会計の専門家として経営者を支える会計人たち。それだけに転職を、働き方や仕事内容、自身のキャリアアップなど「変化」のきっかけにしたいと考える方は多いのではないでしょうか。
自分が求める変化への要求に応えてくれる、新たな職場を探す。そのポイントの一つとなるのが、その事務所や税理士法人の特色や特徴、すなわち差別化されている部分です。
「今の会計事務所と異なる点や改善を目指している点、より職場として魅力的なところを見極めたい!」そのためには、どんな情報に注目すればよいのでしょうか。今回は、そんな「会計事務所の差別化」について代表的なポイントをご紹介してみたいと思います。
■会計事務所が差別化を行うべき理由
すでに皆さんご存じのように、現在はクラウド会計が広く普及しました。出始めたころは「使いづらい」「頼りにならない」と揶揄する声もあったシステムも、クラウド会計サービス各社の切磋琢磨により大きく進化。飛躍的に処理精度を高め、会計事務所はもちろん経営者サイドからも大きな信頼を集めるようになりました。今では税務会計の業務において、欠かすことのできないツールとなっています。
このことに伴い、会計事務所の業務サービスも変化を余儀なくされるようになりました。代表的なものが、従来は中心業務となっていた「記帳代行」をはじめとした一部業務の価値低下です。「数値をまとめる」ことの先にある業務サービスや価値の創造が、選ばれる会計事務所になるために必須となりました。
差別化し、自社の特徴を明確にすることが顧問先との継続的な関係構築と収入の安定化につながる。同時に、新しい環境を求める転職希望の方にとっても、この点を見極めることが理想の職場探しには重要になるはずです。
■最大のキーワードは「未来会計」?
全国の税理士や公認会計士といった会計人によって組織される「あんしん経営をサポートする会」。同会で行われた調査(※1)によると、98.3%もの会計人が「未来会計は、差別化の鍵になる」と回答しました。
過去の実績を整理する「過去会計」に対し、その数値を基にしながら将来の資金繰りや利益計画に基づいて経営判断の支援を行うのが「未来会計」。企業の成長に直結する支援や提案が行えることから、顧問先の満足も生み出しやすくなっています。先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代であるからこそ、経営者に寄り添って提案と改善を行える未来会計への期待は大きなものとなっているようです。
同会への参加の有無を問わず、こうした考え方とサービス設計、その実践と実績を有している。そうした会計事務所であれば、従来とは違う、現在から未来に求められる税務会計サービスに携わるチャンスが高まるでしょう。
【※1:参照】
税理士・会計士による経営計画立案の実態調査(あんしん経営をサポートする会)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000137741.html
■最新のシステム導入やニーズの開拓ができているか
顧問先企業を取り巻く経営環境は、まさに日々激変を続けています。であればこそ、それを支援する専門家たち、会計人の支援力やバリエーションにも進化を欠かすことはできません。こうした変化を敏感に察知し、時代や市場の潮流に沿った支援サービスを展開できるよう準備できているか。こうした点も、会計事務所の差別化につながっています。
例えば、近年注目度が高まっているのは企業のDX導入。ある税理士法人では、顧問先企業で生きた知恵を反映するべく、いち早く自らDX導入に踏み切っていました。実際に自らが経験することで、顧問先企業が導入時に直面する課題や疑問、効果的な準備などが判明。それらを現場で存分に生かしながら、スムーズな導入を支援しているということです。
こうした動きは、最新のITシステムやAIの導入時にも見られます。新しい技術や情報を迅速にキャッチアップし、自らのものとして支援サービスに組み込んでいく。こうしたアンテナ力や柔軟性を持つ会計事務所でならば、その一員として働く過程で自らも最新の環境に身を置き、情報・技術を獲得することができるかもしれません。
■納得感や満足感が得られる労働環境も重視
せっかく充実度の高い業務に携わることができても、業務を通じた満足感や納得感が得られないと長続きしないものです。「これは次の転職までの我慢」と考えるケースもあるかもしれませんが、成長後も引き続き安心して働ける環境であれば、なおありがたいのではないでしょうか。
こうしたときに注目していただきたいのが、評価体制の有無です。近年は事業会社と同様に、明確な評価基準や昇給・昇格基準を設けている会計事務所も増えてきました。どんな評価基準が定められており、それをどれくらいの期間ごとに見直して昇給や昇格へ反映するのか。面談や1on1などの振り返りや、フィードバックの機会は設けられているのか。こうした点が充実している職場であるほど、モチベーション高く働き続けることができるでしょう。
またモチベーション維持の面で見れば、インセンティブ制度なども効果的です。ある会計事務所で出会った若手スタッフさんは、入社して2年ほどでしたがインセンティブを獲得できるよう奮闘! 得られる手当をモチベーションとして短期目標をクリアしつづけ、近く昇格目前まで来ているとのことでした。
■まとめ
本記事では、会計事務所を取り巻く環境変化の中で「差別化」がいかに重要か、そして転職時にどのように見極めるべきかについてご紹介してみました。
クラウド会計の普及により記帳代行の価値が低下する一方、未来会計をはじめとした付加価値業務が新たな軸となり、経営支援力の高い事務所が選ばれる時代へと移行しています。また、DXや最新技術への対応力、さらには評価制度や働きやすさといった職場環境も重要な判断材料となってきていることがお分かりいただけましたでしょうか。
とかく転職時には、業務内容や給与額、待遇や休日休暇などの情報にフォーカスしがちになるものです。もちろん、こうした労働環境にまつわる情報も欠かすことのできない判断材料です。しかし一方で、「それだけ」に左右されるのではなく、自らの成長機会や将来性、働きがいまで含めて総合的に見極める機会と時間をつくってみる。こうした目線を持つことで、よりいっそうあなたが理想とする転職を実現する可能性は高められると考えています。